双子パパ形成外科医の台湾留学日記

30代の形成外科医が、台湾に留学することになりました。

台湾留学48日目 ポスト問題

今日はロー先生やジョウ先生がイタリアに行ってるので、朝のテキストレクチャーがなかった。そして、我が部屋はみんなでぐっすりお寝坊さん笑 9時まで寝てた笑

そのあとは洗濯して、乾燥機かけて、いざオペ室へ。誰もいない。今日のオペはヤオ先生のOGS とトゥ先生の小耳症だけだ。いつも10人くらいいるフェローが、ヤオ先生についてるドゥーイとトゥ先生についてるユーランしかいない笑 みーんないずこへ?たぶんオペがほとんどないから各自好きなことをしているのだろう。フォローしてる先生のオペがない時は、特に決まりはないのだ。ヤオ先生のオペを見学。閉創の縫い方をメモメモ。1件目が12時半という意味不明の速さで終わっている。この人、2jawとgenioもしてるんだぜ?早すぎる。

入れ替えがあるので、寮にもどって昼ごはんでもと思ったら、たまたま会ったカミスとジェアが、リンコウでルー先生のオペがあるから行くか?とのこと。特に予定もなかったので、行くーと。

ピエールロバン症候群という珍しい疾患の下顎延長術だった。小顎が特徴の一つで、エアウェイの確保が必要なレベルのシビアさだ。僕は今回初めてみた。専門医試験で学んだ依頼だ。骨延長器自体も初めてみた。骨延長器の勉強もしないとなーと。なんぞの時にやはり使えるか使えないかは大きな違い。

オペ中にルー先生がいろんな興味深い話をしてくださった。

1つ目は、台湾が小さい国なのでいいデバイスが入ってこないということ。これは前にチェン先生も言っていた。シェアが小さくて儲からないから企業が相手にしてくれないのだ。チェン先生は、ピエゾとかも手に入れるのがものすごく難しいというようなことを言っていた。国の規模が、世界の大企業の関心を引くのだ。その点インドと中国はなんでもあるわよと言っていた。日本もでしょ?と。たしかに日本は人口がまあまあ多い。(保険の関係で、なんでも導入できるわけではないが) デバイスはサージャンにとって命となりうるだろう。この骨延長器も全然良くないのよとのこと。今はもっといろんなタイプのいいやつが出てるのに、台湾は相手にされないの、と。

2つ目はお金の話。どうやら、トゥ先生の小耳症が儲かるとのこと。チャングンはインプラントを使っている。そして、患者は、それを求めて、台湾以外からもたくさんくる。ここの細かいルールはわからないが、どーやら自費の手術には、その主治医に何%かのマージンが入るようだ。うちのジョウ先生も自費の手術が他のサージャンに比べて多いので、給料がそのぶんグイグイと上がっているのだろう。私もフェイスリフトとかファットグラフトとか、学ばなきゃとルー先生。(こんなにオペ詰め詰めで、どこにいれるつもりだい?笑)

3つ目はポストの話。トゥはすごくラッキーだったのよ、とルー先生。なんせ小耳症をやってたシニアドクターが1年かそこらで辞めたから、1年習って、その後すぐに自分のターンなの、と。かくいう私もラッキーの1人なの。唇裂の私のメンターは3年でいなくなったから、技術は引き継いでその後ずっと自分でやってるからね、と。"いかんせんシニアがずっといるとポストがないし、オペが回ってこないのよ。それでみんな辞めていくの。これ日本でも同じじゃない?日本もこの問題はあるはよね?"とこっちに話をふられた。"ありますね。小さい病院であれ大きな病院であれ、ポストの数が限られてるので、シニアドクターがいる限り空かない→辞めて美容に行く、もしくは開業するの流れです。シニアドクターがジュニアドクターにオペを引き継ぐことなくやり続けるのもよくないです。ジュニアドクターが嫌になって辞めるし、シニアドクターが辞めるとそのオペが滞るので病院が大変です。かといって全くオペをしないシニアドクターがトップにのさばっていると、ジュニアドクターはイラついて辞めます。"と答えた。"そう、そしてみんな40代前後になって、子育てにお金がかかって、お金を稼ぐためにパブリックホスピタルを去るのよ"とルー先生が笑って答えた。

どこの国も、同じようだ。これは本当にどう解決したものか。

一つの解決案は、シニアにどけとは言わないが10年ちょいやったら違うものに興味を持ってもらうことだ。もうこれは俺十分やったから、俺あっちやりたいから、これやってねってのがいいのだろう。それくらい冒険心があるシニアなら、きっと新しい物好きで永遠に成長を止めないだろうから、ジュニアもワクワクするだろうし、Win-winじゃないか。

それと日本の制度もよくないのだろう。病院が分散していて、ハイボリュームセンターが少なーいせいで、これやりたいと思ってもなかなか件数がなくて、いつの間にかシニアになってるのに心を満たせないのだ。まだまだ俺がor私がやりたい!!が続くのだ。

そしてサラリーと働き方の問題もある。正直、物価はどんどん上がってるが医者の給料が今後どんどん上がるとは思えない。2-3年自分が停滞してるなと感じたら、少なくとも給料のいい方に行くかとなるのは当然だろう。人生の時間は限られている。仕事場で成長を感じないなら、新天地で自分を試したり、お金をもっと稼いだりしたくなるだろう。

どう解決したものか。今のところ答えは見つからないので、専門医取得後すぐに、もしくは40歳前後で病院や医局を去る現象は続くだろう。

 

手術は無事終わり、ジェアとリンコウでディナー。ヌードルとルーローハンをたのんだら、でかくてびっくり。こんなにいらんかったー。

 

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